2025年10月23日
当塾は頻繁に音読させている。個別はもちろん集団授業でも。
我々人間はまず生まれてきて「オギャー」と発する。そのあと数年は音声で言語を学習する。文字というツールを使用するのはせいぜい3〜4歳くらいからでしょう。やはり言語の核は音声なのである。
しかしその音声を用いない学習を学校に入ると徐々にやらなくなってくる。学年が上がれば上がるほどその傾向は見られる。高校生で単語をインプットするのに声に出している生徒はどれくらいいるのだろうか。単語帳を眺めて日本語の意味を言えてそれでよしとする生徒が多数を占めているように思える。これで定着するわけがない。だから何度も何度もやらなければならなくなる。英語を苦手にした生徒がよく発する言葉に「単語帳を何周もやる」というものがあるが、残念ながら「何周もやっても」無駄だろう。
この数年でタブレット端末を中高生はほぼ生徒全員が持つようになった。文科省が学力向上のため「GIGAスクール構想」と言う名目で端末を普及させたためである。デバイスでの学習作業の多くは機械を操作しながらのコンピュータとの双方向のやりとりである。黙々と行われ「読み書き」の作業はない。一見すると学習環境がよりスムーズで洗練されたものになったかと思われる。が、先日文科省が驚きの調査結果を報告した。なんと2021年から2024年にかけて小中学生の学力低下が進み、特に中3生の英語において顕著であるというものだ。そしてさらに驚きなのはこの時期は皮肉にも文科省がタブレット学習を推し進めた時期と見事に重複していることである。文科省はコロナのせいにしているが、タブレット学習との関連性を否定するのはどう見ても無理だろう。
「九九」を音声なしで覚えるかどうか想像してみていただきたい。まず不可能だろう。同様に「読めない」言葉は決して「覚えられない」。メカニズムは脳神経の専門家でないので説明できないが、これは自らの学習体験、そしてこれまでの生徒たちの学習指導経験から確信している。
当塾は授業中は音で溢れている。私の講義の声、生徒が質問に答える声。私が板書する音、そして生徒がペンを動かす音。そして生徒が英文を読む声。
やはり言語を学習する環境には「自らの肉体的音声」を発しそれを「体内・脳内」に響かせ「蓄積させる」ことは欠かせない。
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